担当者から「車の損害が軽微だから、ケガの対応はしない」と言われました。諦めるしかないのでしょうか?
結論:治療費等を請求できる可能性はあります。
一般に、加害者は、事故と相当因果関係のある損害について賠償責任を負うとされています。
この「相当因果関係のある損害」とは、当該事故によって現実に生じた損害のうち、当該の場合の特有の損害を除き、そのような事故から一般に生じるであろうと認められる損害と解されます。
標題のような軽微な事故の場合、自動車の搭乗者がケガをしていないことがあります。
そして、保険会社・共済担当者は、そういった事情を背景に、対応を拒否する事例が散見されます。
では、諦めるしかないのかというと、必ずしもそうとは限りません。
まず、何をもって「軽微」とするかについて、偏った評価がされている可能性があります。
また、低速度衝突事故でも負傷し得ることは報告されており、軽微な事故=ケガがないと端的に導き出せるものではありません。
令和5年版赤本下巻75頁以下(論者:戸取謙治裁判官)では、本稿のような受傷の有無が問題となることについて考察が行われており、被害者に加わった衝撃の程度(考慮要素として、どこにぶつかったか、どの程度壊れたか、車内のどこに乗っていたか、どのような姿勢であったか、シートベルト有無等)が重要であるが、それとともに、症状の内容・経過、治療経過等を重視し、既往症等のその他事情を総合考慮して判断するという考え方が示されています。
これに当てはめて検討していくと、軽微な事故であっても、治療費等を請求できる事例は少なくないと考えられます。
相当難解な問題であることから、弁護士等の専門家に相談することをお勧めします。
弁護士 北野 岳志