暴力団関係者の保釈請求は認められないのですか?

結論:暴力団関係者でも、保釈請求が認められた事例は複数あります。ただし 、 一般市民に比べて、認められにくい傾向があります。

1 暴力団関係者の保釈に関する裁判所(裁判官)の考え方
多くの裁判官は、暴力団関係者について、反社会性・暴力性が認められ、規範意識が低く、組長を頂点とする強固な組織力があるというイメージを持っていると思われます。

もちろん、裁判官は、イメージでなく個別具体的事情に基づいて判断していると思われますが、前述のイメージが一切のマイナス効果をもたらさないとは言い切れないでしょう。

暴力団関係者が傷害罪等で起訴され、保釈請求がされたものの原審では却下され、さらに抗告された事件につき、名古屋高裁令和2年9月22日決定では、次のように述べています。 「被告人が・・・各被害者を含む関係者に働きかけ、あるいは虚偽の証拠を作出するなどして罪証を隠滅するおそれや、各被害者を含む関係者若しくはその親族に加害行為又は畏怖させる行為をするおそれが認められるから、・・・」
ここまで具体的に述べていなくても、暴力団関係者であることに留意して、逃亡や罪証隠滅のおそれありという理由で保釈を却下した事例は数多あります。

2 暴力団関係者に対する保釈請求が認められる事情
否認事件に比べて、認め事件の方が保釈されやすいのは一般事件と同様ですが、暴力団関係者が被告人である場合はその傾向が顕著となり、否認事件では基本的に保釈を認めてくれません。

認め事件であったとしても、証拠調べ(証拠書類の取調べや本人・関係者に対する尋問など)が終わる前の段階では、保釈を容易に認めない傾向があります。
一般人が被告人の認め事件であれば、証拠調べ前、具体的には第1回公判前の時点でも相当数の保釈が認められていますので、この格差は歴然としています。

加えて、保釈保証金も高めに設定される傾向がみられます。 これは暴力団関係者に資力があるからではなく(※ 最近は資力が乏しい傾向が進んでいる)、一般人より逃亡や罪証隠滅の危険が高いとみなし、抑止効果を高める観点から、金額を高めに設定しているものと考えられます。

弁護士 北野 岳志

2025年07月09日|刑事:刑事