保釈において、被告人と身元引受人は同居していないといけませんか?

結論:同居していない身元引受人でも、保釈が許可されることはあります。

1 保釈請求にあたり、身元引受人は法律上の要件とはなっていません。

加えて、身元引受人には、法律上の監督義務が課されるわけではなく、被告人が逃亡・罪証隠滅を図ったとしても、(身元引受人がそれらに関与していなければ)罰せられることはありません。

しかし、実務上、身元引受人を用意せずに保釈請求をすることは基本的に考えられず、仮に身元引受人なしで保釈請求すれば、極めて高い確率で保釈請求は棄却されると考えられます。
その理由としては、一般に被告人には逃亡したり罪証隠滅を図ったりするおそれがあると解されているところ、被告人の身元を引き受け、監督する人物がいない状況では、前記のおそれが十分に解消されないと言えるからだと思われます(※ 独自の解釈)。

そのため、保釈請求にあたり、身元引受人は必須と言ってもよいでしょう。

2 では、どのような人物が身元引受人として適格なのでしょうか。

一般には、被告人と同居し、被告人を監督し得る親子夫婦等の人間関係がある人物が妥当と考えられます。

同居していれば、毎日顔を合わせますし、何かしらの変化・異常を感知しやすいと言えます。

加えて、親子夫婦等の人間関係があれば、監督や注意をしやすく、被告人としても反発なくこれを受け入れやすいと解されます。

3 では、同居していない人物では、身元引受人として不適格なのでしょうか?

私自身、同居していない身元引受人でも、起訴直後の保釈を認めてもらった経験がいくつかありますので、不適格とまで言うことはできません。

もっとも、前記経験を検証すると、大きく3つの特徴が認められます。
1つ目は、認め事件・軽微事件で、ほぼ確実に執行猶予判決が予想される等、一般に保釈が認められやすい類型であったことです。
2つ目は、友人・親戚等、親子や夫婦には劣りますが、一定の人間関係が存在していたことです。
3つ目は、毎日どこかで顔を合わせることを保釈条件に盛り込む等、被告人と頻繁に接触するようにしたことです。

4 このように、同居していない身元引受人でも保釈許可が認められることがあります。

個々の事件によって可能性は異なりますが、1人暮らしの方でもあきらめず、自身の交友・親戚関係を洗い出す等して、保釈請求をしてみるべきでしょう。

弁護士 北野 岳志

2025年02月08日|刑事:刑事