平日は気になる異性の方が住んでいる家の近くに行き、無事に出勤する様子を見届けていますが、犯罪になりますか?
結論:ストーカー行為等の規制等に関する法律(以下「ストーカー規制法」という)における「つきまとい等」に該当し、犯罪行為として罰せられる可能性があります。
1 ストーカー規制法では、「つきまとい等」をつぎのように定義しています(長いので、いくつかに分けています)。
①特定の者に対する
②恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で
③当該特定の者又はその配偶者、直系若しくは同居の親族その他当該特定の者と社会生活において密接な関係を有する者に対し
④次の各号のいずれかに掲げる行為をすること
①は、対象(被害者)が、特定の誰かであることを要件としています。異性、同性を問いません。
②の「好意の感情」とは、誰かを好きな気持ち、親愛感、憬れの感情のことを意味します。
「怨恨の感情」とは、自身の好意が受けいれられなかったことを契機に、恨む気持ち、憎しみの感情に転化したものです。
「充足する目的」とは、先程の好意の感情や怨恨の感情を充たすためであることを意味します。
③は、特定の者本人のみならず、その親族・姻族や関係者まで保護対象となることを意味しています。
「社会生活において密接な関係を有する者」の典型としては、職場の上司・同僚や恋人・友人があげられます。
親族・姻族・関係者が「つきまとい等」にさらされることで、ひいては、特定の者が心理的圧迫を受け、意思決定・行動に悪影響を及ぼすような場合が想定されています。
④は8類型が規定されていますが、もっとも多いと思われるのが、「つきまとい、待ち伏せし、進路に立ちふさがり、住居、勤務先、学校その他その現に所在する場所若しくは通常所在する場所(以下「住居等」という)の付近において見張りをし、住居等に押し掛け、又は住居等の付近をみだりにうろつくこと」(ストーカー規制法第2条1項1号)です。
次項で詳述します。
2 「つきまとい」「待ち伏せ」「進路に立ちふさがり」「見張り」は文字通りの意味です。
「押し掛け」は、住居等の平穏が害されるような態様で、社会通念上容認されないものとされ、典型は、夜間にドアチャイムを鳴らすような行為です。その際、相手方が在宅しているか否かは問わないとされます。
「うろつく」とは、あてもなくフラフラと移動することです。
「その他その現に所在する場所若しくは通常所在する場所」は、少々わかりづらいですが、飲食店、ホテル、公園等、対象者が実際にいる場所のことです。
「みだりに」とは、行為の態様を示す意味も含んでおり、社会的相当性がないような態様によることを意味します。通常人の感覚で見ると、おかしい・怪しい・気持ち悪いと思われるような場合が広く含まれると解されます。
3 説例では、相手方への好意の感情から(←①②)、相手方に対し(←③)、その住居付近で(相手方から頼まれたわけでもないのに)見張りをしている(←④)ので、ストーカー規制法における「つきまとい等」に該当すると思われます。
つきまとい等が反復して行われていると評価された場合、刑事罰(1年以下の懲役又は百万円以下の罰金)や行政処分(接近等禁止命令など)の対象となります。
そうならないよう、自らを戒め、直ちにつきまとい等を止めるべきです。
弁護士 北野 岳志