刑事事件被害者との示談交渉が上手くいかないケースには、どのようなものがありますか?
結論:よくある場合としては、①話に応じていただけない、②示談条件が折り合わない等があげられます。
1 話に応じていただけない
刑事事件においては、何ら非がないのに、(犯人と)何の接点もないのに、犯罪被害者となるケースが珍しくありません。
このような場合、被害者本人や被害者側関係者が、犯人に対して憤りや嫌悪感を抱くのは当然と言えます。
まして、重大犯罪・性犯罪であれば、被害感情はますます厳しくなるのが一般的です。
このように被害感情が厳しくなると、犯人側(弁護人も含まれる)と会いたくない・話したくないという気持ちが強まり、交渉を拒否されることがあります。
2 示談条件が折り合わない
示談交渉において、もっとも大きな意味を持つのが「金額」です。
どれぐらいの金額が妥当かについては、犯罪類型、被害の程度等から、前例を参考にして、ある程度の範囲は導き出せることは多いです。
もっとも、犯人側の資力、特に犯人が逮捕・勾留されている場合は、周りの方々(家族・親戚・友人等)がどれだけのお金を準備できるかによって、提示できる示談金額は異なってきます。
他方、同じような犯罪被害でも、人によって犯罪被害に対する金銭評価は異なるため、Aさんは30万円要求し、Bさんは100万円請求するということが起こり得ます。
このように、ぼんやりとした相場はあるものの、犯人側の資力と被害者側の要求の折り合いがつかなければ、合意には至りません。
お金に比べると数は少なくなりますが、お金以外の条件でまとまらないこともあります。
一例をあげると、犯人と被害者の生活圏が接近している場合、被害者側が犯人に遠方に引っ越すよう求めてくることがあります。
「二度と会いたくない」「また会うのが怖い」という被害者の気持ちは十分理解できます。
しかし、引っ越して生活圏を変えることは、金銭的負担もさることながら、仕事・社会生活にも大きな影響を及ぼします。
そのため、(申し訳ありませんが)そのような要求には応じ難いと回答することが多いと思われます。
3 最後に
示談交渉が上手くいかない主な類型を挙げさせていただきましたが、粘り強く交渉を継続する中で、当初条件面で乖離がおおきかったところが、双方の妥協点を見出して合意に至ることもしばしばあります。
まずは、示談交渉を持ち掛けることが必要ですので、依頼する弁護士とよく相談して進めていくべきでしょう。
弁護士 北野 岳志