痴呆が進んだ老父の財産管理を兄がしていますが、生活が派手になっていることから、使い込みをしているのではと疑っています。どういうことを調査すべきですか?

結論:第一に、父親名義口座の預貯金の額の推移を調べることがあげられます。第二に、通常時における支出と収入を比較することがあげられます。

1 預貯金の額の推移
本人以外の人物が財産管理を始めた頃の残高と現時点の残高を比較し、短期間で大きく目減りしている場合は、使い込みが強く疑われます
一般に痴呆が進行した高齢者が、(金銭消費を伴う)活発な社会活動をするとは考え難いことも、疑うべき理由の一つです。
もちろん、大金を費消せざる得ない特殊事情が有る場合は別ですが、そういった特殊事情が有ったことについては、管理者が主張・立証すべきであり、合理的な説明及び証拠の提示がなければ、疑惑は拭い去れないでしょう。

ところで、実際に使い込みをする等後ろめたいことがある場合、通帳等の証拠資料の開示を渋ることが多々あります。
その場合は、本人(※ 本件では老父)を説得し、本人からの請求という形式をとって、金融機関から過去数年分の入出金履歴の開示を求めることが考えられます。

2 支出と収入の比較
支出としては、家賃・水道光熱費・食費等があげられます。
デイサービスや施設を利用している場合は、その利用料も加算されます。
地域事情によって若干異なりますが、官公庁で年齢や家族構成に応じた平均値を公表していたりするので、そちらを参考にするのも1つです。

収入としては、高齢者の場合は年金になります。
定期的に送られる通知ハガキのほか、年金事務所でも確認が取れます。

これらを比較し、少なくとも毎月●円残るところ、まったく残っていない・貯蓄されていない場合は、使い込みが疑われます
ただし、預貯金額の推移に比べるとわかりにくいほか、金額の裏付けを取るべき資料が多いので調査に時間を要します。

3 最後に
そのほか、これ以上の使い込みを許さないため、他の親族に財産管理を移すことを早急に検討すべきです。
適当な方がいない場合は、管轄の裁判所に成年後見や保佐人の選任を申立てて、専門職に担ってもらうというやり方もあります。

使い込みにしろ、成年後見等の申立てにしろ、個人で対応するのは中々大変なので、弁護士等専門職に相談することをお勧めします。

弁護士 北野 岳志

2025年05月23日|その他:その他