親告罪とは何ですか?期限内に告訴する必要があると言われましたが、どういうことでしょうか?

結論:親告罪では、告訴がなければ、犯人が刑事罰を科されることはありません。告訴は犯人を知ってから6ヶ月以内に行う必要があります。

1 親告罪とは
親告罪とは、告訴が訴訟要件(公訴提起要件)となっている犯罪です。

親告罪が設けられた理由は、犯罪類型によって様々ですが、大きく3つの類型が考えられます。

1つ目は、公訴提起によって、かえって被害者の利益・名誉等の侵害が拡大するおそれがあることから、公訴提起を被害者の意思に委ねるべきとされたものです。
例として、名誉の対する罪(刑法232条1項)や秘密を侵す罪(刑法135条)等があげられます。

2つ目は、犯罪被害が比較的軽微で、被害者の意思に反してまで公訴提起する必要はないとされたものです。
例として、過失傷害罪(刑法209条2項)、器物損壊罪(刑法264条)等があげられます。

3つ目は、犯人・被害者間に一定の人間関係があり、このことに鑑みて公訴提起を被害者の意思に委ねるべきとされたものです。
例として、親族間の犯罪に関する特例(刑法244条2項)があげられます。

なお、以前は親告罪とされていた性犯罪は、2017年の法改正によって、告訴不要の非親告罪とされています。

2 告訴期間
まず、告訴ができるのは、犯罪によって被害を受けた方(被害者)です(刑訴法230条)。

そして、告訴は、犯人を知った時から6ヶ月以内に行わなければなりません(刑訴235条)。

告訴期限が設けられた理由としては、公訴提起するか否かがはっきりしない状態を、長期間、個人の意思に委ねたままにしておくべきではないとされるからです。

事件から長期間が経過すると、関係者の記憶が亡失したり、物証が喪失・損壊したりして、公判請求や有罪立証が困難になるという事情もあるように思われます。

この「犯人を知った」とは、犯人が誰で、どのような人物かを認識する程度を意味し、住所・氏名等の詳細まで知る必要はないとされます。
よって、あの人だとわかったが、住所・氏名は知らないから、6ヶ月経過しても告訴できる・・・ということにはなりません。

3 最後に
勘違いしやすい場合として、自動車にぶつけられた場合と自転車にぶつけられた場合を取り上げたいと思います。

自動車にぶつけられてけがをした場合は、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律が適用され、非親告罪として処理されます。
他方、自転車にぶつけられてけがをした場合は、親告罪の過失傷害罪が適用されるため、告訴しなければ刑事罰を科されることはありません。

弁護士 北野 岳志

2024年01月31日|刑事:刑事