家庭菜園のため購入した中古農機具が、初日に故障しました。業者に修理を求めたところ、契約上、修理費は購入者の全額負担と言われましたが、どうにもならないのでしょうか?
結論:修理費を買主が全額負担する旨の契約条項は無効であり、事業者に対して、事業者負担での修理等を求めることができます。
1 民法の原則
民法562条1項本文は、買主の追完請求権について、次のように規定しています。
「引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる」。
本件では、買主は、目的物である農機具について、不具合があるとは聞いていませんし、不具合を承知の上で購入しているわけでもありません。
よって、農機具の品質が、売買契約の内容に適合しないのは明らかであると考えられ、買主は売主に対して、故障の修理(※ 事業者負担で)や代替物の引渡しを要求できると考えられます。
これに買主が応じなければ、契約解除の上、代金の返還を求めることも可能でしょう(民法541条)。
2 消費者契約法における条項の無効
消費者契約法8条乃至10条は、消費者~事業者間における契約において、事業者の損害賠償責任を免除したり、消費者の利益を一方的に害したりする内容の条項は無効にすると規定しています。
その趣旨は、消費者と事業者における情報・交渉力の格差に鑑み、消費者を保護することにあります。
本件の買主は、消費者(※ 事業として、または、事業のために購入したわけではない)であること、及び、当該条項は前記民法に比して消費者の利益を一方的に害することになることから、当該条項は無効になると考えられます。
そのため、本件売主の言い分は排斥され、前述の民法の原則に従った責任を負うことになります。
3 最後に
このように、本件では、売主は農機具を修理したり、代替物を用意したりする義務を負うことになりますが、悪質な業者だと、屁理屈を述べて応じないことがあり得ます。
そのような場合、個人で対応するのは中々大変ですから、弁護士等専門家に相談することが推奨されます。
弁護士 北野 岳志