犯罪でよく言われる「営利の目的」とは何でしょうか?

結論:自分や第三者が利得するように企むことを意味します。

1 「営利の目的」が要件とされている刑罰
代表的なものとしては、淫行勧誘罪(刑法182条)、営利目的等略取及び拐取罪(刑法225条)、覚醒剤輸入等罪(覚醒剤取締法41条2項)、覚醒剤所持等罪(覚醒剤取締法41条の2第2項)等があげられます。

2 「営利の目的」の意義
自分自身や第三者が財産上の利益を得るようにすることです。
覚醒剤取締法違反で考えると、覚醒剤を輸出したり、譲渡したりすることによって、金銭ないしこれに準じるもの(債権、電子マネー、動産、不動産等)を獲得するということです。
借金・債務免除も含まれます

利得は一時的なものでもよく、営業的・継続的・反復的である必要はないとされています。
覚醒剤取締法違反で考えると、プロの売人や反社会的勢力に属する者でなくても、営利目的が肯定されてしまうということです。

3 「営利の目的」による厳罰化
一般に、営利の目的で犯罪を計画・実行することは、非常に悪質であるとされていて、重度の法定刑が規定されています。

覚醒剤取締法違反において、営利目的のない単純所持等であれば、法定刑は10年以下の懲役です(同法41条の2第1項)。
しかし、営利目的がある場合は、法定刑は1年以上の懲役となり、場合によっては500万円以下の罰金が併科されます。

また、営利目的のない単純所持等であれば、初犯には執行猶予が付くのが通常です。
しかし、営利目的がある場合は、初犯でも実刑の可能性が高くなります。
2犯目以降でも、営利目的がある方がより重い量刑となっています。

4 その他
営利目的の有無は、罪刑の成立のみならず、量刑や執行猶予の有無に多大な影響を及ぼすこともあって、裁判で争われることが少なくありません。
具体的には、検察側が営利目的ありを主張し、被告人側が営利目的なしを主張するというものです。
争う余地があるのかどうかは、個別具体的な判断となりますので、弁護士を含めてよく検討をすべきでしょう。


弁護士 北野 岳志

2023年11月03日|刑事:刑事