出会い系で知り合った女性から、不同意わいせつ罪で告訴されました。私は同意はあったとの主張ですが、彼女の供述だけで有罪とされることはありますか?

結論:被害者供述の信用性が高いと評価されると、有力な客観証拠がなくても、同意がなかった(→性的犯罪が行われた)と認定される可能性はあります。

1 性犯罪の特徴
性的行為が行われるのは、1対1の状況下であることが非常に多く、目撃証言は通常期待できません。
また、特殊な性癖がある場合を除き、音声・映像が記録されていることもありません。
そのため、類型的に客観証拠が乏しい犯罪と言えます。

2 被害者供述の信用性
一般的に、供述の信用性を判断する要素としては、供述内容の合理性(※ 不自然なところはないか)、供述の一貫性(※ 日によって供述が二転三転していないか)、供述を裏付ける客観証拠の有無等があげられます。

このうち、供述内容の合理性判断では、被害者・加害者との関係、当該行為に至る経緯、被害状況、被害後の経過等をみていくことになります。
問題を難しくしているのは、無理やりの性的行為に直面した被害者の反応に個人差があることです。
大声を出したり、暴れたりと積極的に抵抗する人もいれば、体が固まってしまい、気持ちとは裏腹に抵抗できなくなったりする人もいます。
そのため、供述内容の合理性判断は、極めて慎重に行う必要があります。

3 虚偽供述の動機
被疑者・被告人が性的犯罪をしていないことが事実であれば、被害者は嘘をついたということになります。
この点に関し、被害者に嘘をつく動機、言い換えれば被疑者・被告人を陥れる背景事情があるかも、評価のポイントになります。

例えば、双方の面識がない場合、被害者側の虚偽供述の動機が考え難いため、供述が具体的で一貫していれば、信用されやすいという傾向があります。
もっとも、初対面であっても、何かしらのトラブルがあり、被害者が被疑者・被告人に対して激しく憤っていた等の事情があれば、評価は変わってきます。

4 被疑者・被告人供述の信用性
被害者供述の信用性を図る上で、被疑者・被告人供述の信用性も評価されます。
難しく言うと、被害者供述の信用性は、被疑者・被告人供述から導かれる反対事実が存在するとの疑いに合理性がないといえる程度でなければならないということです。

となると、被疑者・被告人側としては、自らの供述を裏付ける客観証拠がある場合等は、黙秘するより、当該客観証拠に整合する供述を一貫して述べた方が効果的とも考えられます。

ただ、捜査段階で証拠が開示されることは基本的にないため、この点の判断は難しいと言えます。
少なくとも、信頼できる弁護人と十分に協議をすべきでしょう。


弁護士 北野 岳志

2023年09月18日|刑事:刑事