刑の時効と公訴時効とはどう違うのですか?
結論:刑の時効とは、有罪裁判が確定してから一定期間、刑罰権が行使されなければ、刑罰権が消滅するというものです。他方、公訴時効とは、刑事裁判の確定前において、犯罪が終了してから一定期間、公訴が提起されなければ、公訴権が消滅するというものです。
1 刑の時効
刑の時効は、有罪裁判確定後を対象とします。
すなわち、有罪裁判確定後、一定期間、刑罰権が行使されなければ、(確定した)刑罰を執行することはできなくなるというものです。
刑法32条は、刑の時効について、次のように定めています。
①無期の懲役又は禁錮:30年、②10年以上の有期懲役又は禁錮:20年、③3年以上10年未満の懲役又は禁錮:10年、④3年未満の懲役又は禁錮:5年、⑤罰金:3年、⑥勾留・科刑・没収:1年
具体的には、有罪裁判が確定した後に逃走した場合、罰金をずっと支払わない場合等があげられます。
ただ、ほとんどの有罪裁判は、確定後または確定と同時に即執行されるので、問題となる事例はあまりないように思われます。
なお、拘禁刑・罰金等については、国外に逃げた場合は、時効は進行しないとされています(刑法33条2項)。
2 公訴時効
前提として、人に刑罰を科すには、国(検察官)が公訴を提起し、有罪判決を得る必要があります。
公訴時効は、犯罪終了から一定期間が経過すると、このような公訴の提起ができなくなるというものです。
刑事訴訟法250条は、公訴時効について、次のように定めています。
(1)人を死亡させた罪であって禁錮以上の刑にあたるもの(死刑を除く)
①無期の懲役又は禁錮:30年、②長期20年以上の有期懲役又は禁錮:20年、③前記①②以外の罪:10年
(2)前記(1)以外の罪
①死刑にあたる罪:25年、②無期の懲役または禁錮:15年、③長期15年以上の有期懲役又は禁錮:10年、④長期15年未満の懲役又は禁錮:7年、⑤長期10年未満の懲役又は禁錮:5年、⑥長期5年未満の懲役又は禁錮:3年、⑦拘留又は科刑:1年
(3)前記(1)(2)以外の特別規定
①不同意わいせつ致傷罪、強盗・不同意性交等罪、常習強盗致傷、常習強盗不合意性交等罪:20年、②不同意性交等罪、監護者性交等罪:15年、③不同意わいせつ罪、監護者わいせつ罪、18歳未満の児童に対する淫行罪(自分を相手方とするもの):12年
被害者が18歳未満の場合は、被害者が18歳になるまでの期間が、公訴時効に加算されます。
公訴時効は、公訴が提起されれば進行が停止するほか、共犯者の1人に対する停止が他の共犯者にも効力を有するとされています(後者については、裁判確定後に公訴時効の進行が再開される)。
公訴時効は、犯人が国外にいる間についても、進行が停止します。
国内で(単に)逃げ隠れている場合は基本的に停止しませんが、公訴提起後、起訴状の送達が逃げ隠れているために不能となった場合については、進行が停止するとされています。
弁護士 北野 岳志