冒頭陳述とは何ですか?

結論:検察官が行う冒頭陳述は、刑事裁判において、事件の全貌を明らかにし、公訴事実を構する個々の事実を具体的かつ詳細に述べる手続きです。弁護人が行う冒頭陳述は、弁護側が考える(検察側と異なる)ストーリーを、証拠により証明すべき事実をもって詳述する手続きです。

1 検察側冒頭陳述(刑訴296条)
検察官は、刑事裁判において、証拠調の冒頭において、証拠により証明すべき事実を明らかにしなればならないとされています。
これは、裁判所としては審理方針を立てること、弁護側としては防御方針を立てることに資するものです。

具体的には、被告人の身上経歴、犯行態様、犯行事実に直結する動機、犯行に至る経緯等です。
特殊な事例として、犯行の発覚から犯人の特定までの経過等が言及されることもあります。
これらによって、起訴状記載の公訴事実の存在と犯罪の成立を主張するわけです。

冒頭陳述の内容や分量は、認め事件か否認事件かで異なり、前者の方が簡潔になります。
これら事実を書面化して、検察官が朗読するというのが一般的です。

この冒頭陳述では、裁判所に偏見・予断を生じさせるような事項を述べることは許されないとされています。
仮にこのような陳述がある場合は、弁護側異議申立てが許されると解されます(刑訴309条1項)。
ただ、どこまで許容されるか・許されないかは諸説あり、裁判としては広く許容する(弁護側異議を認め難い)傾向にあると解されます。

2 弁護側冒頭陳述(刑事訴訟規則198条、裁判員法)
弁護側冒頭陳述は、公判前整理手続に付された事件(例:裁判員裁判)では義務とされています。
それ以外では任意的ですが、否認事件では実施されることが多いように思われます。

弁護側冒頭陳述では、弁護人の考えるストーリー(「ケースセオリー」と言われることも)を、それを構成する各事実(公訴事実を否定する事実、犯罪成立を阻却する理由や減刑理由となる事実、動機・量刑に関する事実等)をもって明らかにすることが求められます。
これにより、対立軸・争点が明確になり、的確な攻撃防御によって、審理を充実させ、円滑に進めることに資するとされます。

弁護士 北野 岳志

2023年08月19日|刑事:刑事