不貞(不倫)の慰謝料は、いくらぐらいになるのでしょうか?どのようにして算定されるのでしょうか?
結論:200万~400万円が多いと解されます。算定に当たっては、諸般の事情が総合考慮されますが、中でも、婚姻期間や不貞期間の長さ、及び、不貞行為によって婚姻関係が破綻に至ったか否かが重要と思われます。
1 前提
不貞行為とは婚姻当事者の一方が第三者と肉体関係を持つこと、不貞に及んだ婚姻当事者の一方と第三者には共同不法行為が成立すること、両名は他方の婚姻当事者に対して不真正連帯債務を負うことは、以前(2023.6.13付)のよくある質問(FAQ)で述べたとおりです。
なお、肉体関係がなくても、第三者が婚姻生活を破壊したと評価できる場合には、慰謝料を肯定した裁判例もありますが、レアケースであり、一般化することはできないでしょう。
2 不貞慰謝料の考慮要素
主に取り上げられる要素としては、①婚姻期間、②婚姻生活の状況と破綻の有無、③不貞の期間、④不貞の態様、⑤どちらが主導したか、⑥未成年の子の有無、⑦不貞された婚姻当事者における落ち度の有無・内容等です。
3 不貞慰謝料に関する裁判例の検討
以下では、いくつかの裁判例を取り上げ、前記2における①~⑦の事情がどうだったか、最終的な慰謝料がいくらになったかを見ていきます。
(1)東京地判平成16.3.2:慰謝料200万円
妻が夫の不貞相手に不貞慰謝料を請求した事例
①7年間、②別居する等、実質的には破綻しているが離婚には至っていない(妻が離婚を望んでいない)、③4年間?、④夫と不貞相手は妻に暴行や嫌がらせを行う、不貞相手は夫の子を出産、⑤不明、⑥1人あり、⑦不明
(2)東京地判平成16.2.19:慰謝料300万円
妻が夫の不貞相手に不貞慰謝料を請求した事例
①約20年間、②別居する等実質的には破綻しているが、離婚には至っていない、③2~3年間、④不貞相手は夫の子を出産し、生計を夫に依存、⑤夫がインターネットで相手を募集した、⑥なし、⑦不明
(3)東京地判平成15.6.12:慰謝料400万円
夫が妻の不貞相手に不貞慰謝料を請求した事例
①約11年間、②調停を経て離婚に至った、③1年間超、④妻と不貞相手は夫に無断で預金を引き出したり夫名義で借入をしたりした、⑤不明、⑥2人、⑦不明
(4)東京地判平成14.10.21:慰謝料500万円
妻が夫の不貞相手に不貞慰謝料を請求した事例
①約36年間、②別居中(不貞相手と同棲)だが、離婚には至っていない、③14年間、④不貞相手は夫の子を出産、夫は妻に無断で協議離婚届けを提出、⑤不明、⑥不明、⑦不明
4 最後に
不貞慰謝料の裁判例は非常に多いものの、考慮要素の内容や取り上げ方は様々であり、正確な認定額を見通すのは容易ではない印象です。
その中でも、婚姻期間及び不貞期間の長さ、不貞行為によって婚姻関係が破綻に至っていることが、大きな影響を及ぼしていると思われます。
いずれにしても個別具体的な検討が必要ですので、弁護士への相談が推奨されます。
弁護士 北野 岳志