警察に差押された物を早く取り戻したいのですが、どうしたらいいですか?

結論:還付請求・仮還付請求の手続きを用いることができます。

1 前提:差押とその効果
犯罪捜査の必要があるときは、令状に基づく差押ができるとされています(刑訴法218条1項 なお、令状によらない差押については刑訴法220条1項)。

差押は、捜査機関が一時的に物や書類等を領置する処分で、所有権に変動をもたらすものではありません。
そのため、犯罪捜査の必要がなくなれば、禁止薬物や盗品等を除き、押収物を被押収者に返還しなければなりません。

2 還付請求と仮還付請求
押収物は、通常、不起訴処分となったり、公判の証拠として用いられなかったり、終局判決が確定したりした後に、返還されます。

もっとも、被押収者は、捜査機関が押収物を自主的に返還する前に、押収物の返還を請求することができます
この制度が、「還付請求」と「仮還付請求」です(刑訴法123条1項2項、222条1項)。

還付請求は、「留置の必要がないもの」について、できるとされています。
具体的には、押収物が証拠物でない、または、証拠として使用する見込みがないことが明らかとなった場合や、没収することが不可能であるか、その必要がないことが判明した場合とされています。

仮還付請求は、「留置の必要」はなくなっていないものの、一時的に返還しても捜査に支障がないと認められる押収物について、できるとされています。
「仮」であることから、仮還付を受けた物を勝手に処分することは許されず、犯罪捜査の必要がなくなって正式な還付を受けるまで保管義務を負うことになります。

3 請求先と抗告
事件が検察官に送致される前の段階では、管轄警察署の署長が請求先となります。
送致後は、担当検察官が請求先となります。
押収物が証拠品として裁判所に提出されて領置手続きがとられると、裁判所が請求先となります。

還付請求が却下された場合には、これに対する抗告・準抗告を行うことができます。
明確な却下処分がなくても、相当期間、何の処分もしないまま放置されている場合にも、準抗告することができるとされています。

4 最後に
仕事等で、どうしても押収物を早期に返還してもらう必要があるケースは少なくありません。
そのための還付・仮還付請求を検討される場合は、弁護士に相談することをお勧めします。

弁護士 北野 岳志

2023年07月12日|刑事:刑事