クーリング・オフには期間制限があると聞きましたが、すべて同じなのですか?
結論:訪問販売、電話勧誘販売、特定継続的役務提供、訪問購入は8日以内、連鎖販売取引、業務提供誘因販売取引は20日以内とされています。いずれも、法令の要件を満たした書面の交付、または、電磁的方法による提供がなされた時が起算点となります。
1 クーリング・オフの概要
クーリング・オフとは、特定の取引類型につき、所定の期間内に、消費者が無条件で契約を解除できる制度です。
詳細は、特定商取引に関する法律(通称「特商法」)に規定されています。
事業者と消費者との圧倒的な知識・交渉力の格差に鑑み、消費者の損害防止・利益保護の観点から設けられた制度と解されます(特商法1条参照)。
2 クーリング・オフの起算点
クーリング・オフは所定の期間内に行使する必要がありますが、起算点となるのは、法令の要件を満たした書面の交付、または、電磁的方法による提供がなされた時です。
言い換えれば、前記交付・提供がなされていなければ、いつでもクーリング・オフが行使できることになります。
3 クーリング・オフの対象となる取引類型と行使期間
(1)起算点から8日以内の行使が必要とされるもの
訪問販売、電話勧誘販売、特定継続的役務提供、訪問購入の4つがあげられます。
訪問販売は、事業者が消費者の自宅等に訪問し、商品や権利の販売、役務の提供等を行う契約をする取引のことです。
電話勧誘販売は、事業者が消費者に電話を架けて勧誘する取引のことです。
特定継続的役務提供とは、長期・継続的な役務の提供とこれに対する対価を支払う取引のことです。
現在、エステ、美容医療、語学教室、家庭教師、学習塾、結婚相手紹介サービス、パソコン教室7つが対象とされています。
訪問購入は、事業者が消費者の自宅等を訪問して、物品の購入を行う取引のことです。
(2)起算点から20日以内の行使が必要とされるもの
連鎖販売取引、業務提供誘因販売取引の2つがあげられます。
連鎖販売取引は、個人を販売員として勧誘し、更にその個人に別の販売員の勧誘をさせる形で、販売組織を連鎖的に拡大して行う商品(権利)・役務に関する取引のことです。
マルチ商法と言われるものが、これにあたります。
業務提供誘因販売取引とは、軽微な業務で多大な収入が得られるなどという口実で消費者を誘引した上で、当該業務に必要である等と理由をつけて、マニュアル・商品(権利)を先行して購入させる取引のことです。
高額なマニュアルを買わされたけど、約束されていたような美味しい仕事が来ないというのが、よくあるパターンです。
4 クーリング・オフは万能ではない
クーリング・オフを行使すると、契約は解除になり、事業者は受領した金員を消費者に返還しなければなりません。
もっとも、事業者の中には、屁理屈をつけてクーリング・オフを認めなかったり、突然音信不通になって行方をくらましたりすることがあります。
また、判決で勝訴しても、十分な資力がないので支払えないということもあります。
そのため、クーリング・オフさえすれば万事解決ということではなく、そのような悪質な事業者とは、契約自体しないことが最良と思われます。
弁護士 北野 岳志