銀行から借金する知り合いから、保証人になってと頼まれ、やむなく了承してから5年以上経ちました。消滅時効を援用して保証債務を消滅させることはできますか?

結論:主たる債務者の分割・一部返済が行われているか否かを、確認する必要があります。分割・一部返済が行われれば、それによって保証債務についても時効が更新されるからです。

1 実例:主債務と保証債務
Aさんは、毎月1万円ずつ返済する約束で、B銀行から100万円を借りました。
その際、B銀行からの要請で、Cさんに保証人になってもらうことになりました。
この場合、AさんはB銀行に対して100万円を返済する義務を負い(※ これを「主債務」といいます)、CさんはAさんが100万円を返せない場合に代わりに返済する義務(これを「保証債務」といいます)を負います。

2 主たる債務者(Aさん)について生じた事由が保証人(Bさん)にもたらす効力
保証債務に独立の目的はなく、主たる債務を担保するために存在します。
これを、(主たる債務に対する)付従性といいます。

付従性の具体例は、次のようなものです。
①主たる債務の成立が無効であれば、保証債務も無効となる(なお、根保証に注意)。
②主たる債務が、弁済、取消し、解除等によって消滅すれば、保証債務も消滅する。
③保証債務が、主たる債務より重くなることはない。
④主たる債務者に対する時候の完成猶予、及び、更新は、保証人に対しても効力を生じる(民法457条1項)。
⑤保証人は、主たる債務者の抗弁権(同時履行、消滅時効等)を行使することができる(民法457条2項)。
⑥保証人は、主たる債務者に認められる相殺権、取消権、解除権の行使によって債務を免れられる限度において、保証債務の履行を拒むことができる(民法457条3項)。

3 保証債務における独自の消滅時効援用の可否
保証債務にも、消滅時効は適用されます(民法166条等参照)。

しかし、主たる債務者が一部でも弁済をすれば、それが残部に対する承認となるため、時効が更新されます(民法152条1項)。
すなわち、弁済の時点から新たに時効が起算されるということです。
そして、前記2④によって、主たる債務者にて時効の更新がなされれば、保証債務についても時効の更新がなされます
となると、主たる債務者の一部弁済が継続される限り、保証債務における消滅時効が完成することはありません。

4 実例における検討
B銀行がAさんに100万円を貸し付け、同時にCさんが保証人になってから5年以上経過したとしても、Aさんが毎月1万円の返済を怠らなければ、返済の都度、時効が更新されます。
そうであれば、Cさんの保証債務について消滅時効は完成せず、援用もできなくなります。

弁護士 北野 岳志

2023年06月28日|その他:その他