収入減で途中で返済できなくなった借金があります。返済中止から10年近くになりますが、未だに督促状が送られてきます。どうすればよいでしょうか?

結論:返済が止まって、期限の利益を失ってから、何事もなく5年超経過している場合は、消滅時効を援用することで返済義務を免れることができると考えられます。

1 消滅時効について
消滅時効とは、一定期間、行使されていない債権を消滅させる制度です(民法166条乃至169条)。

期間経過後、自動的に消滅するのではなく、債務者から「援用」という表示行為が必要となります(民法145条)。
なじみのない言葉ですが、さして難しいものではなく、債権者に対して、口頭・書面等で「時効を援用する」と伝えるだけです(※ 裁判外でも可)。

「一定期間」については、一般の貸金債権の場合、①債権者(貸し手)が権利行使可能であることを知った時から5年、②権利行使可能であるときから10年とされています(民法166条1項)。
権利行使可能であるとは、返済期限が到来しているときと考えられます。
銀行や消費者金融等の金融機関については、専門的知識とそれに基づく管理を行っていると解されることから、権利行使可能であることを知らなかったとは言い難く、基本的に①(5年)となるでしょう。

2 改正民法施行前(2020.3.31以前)について
一般の民事債権の消滅時効の期間は、10年とされていました(改正前民法167条1項)。

他方、貸金業者は、信用組合等の一部例外を除いて会社であり、会社が事業として行う行為は商行為となることから、商事債権として5年の消滅時効(商法522条)が適用されると解されていました。

なお、現在は、商法522条は廃止され、民事債権・商事債権とも、基本的に改正後民法166条1項が適用されます。

3 本件の考え方
借入時期は2020.3.31以前と思われますが、消費者金融からの貸金債権については、前述のように5年で消滅時効が完成します。
そのため、最後の返済から5年以上の期間が経過している場合は、消滅時効の援用を検討すべきでしょう

ところで、一部の悪質な担当者は、消滅時効の援用など馬耳東風で請求を続けることがあるようです。
そのような場合は、対応について、弁護士にご相談ください。

弁護士 北野 岳志

2023年06月16日|債務整理:債務整理