妻が不貞行為をしたと疑っていますが、妻は否定しています。どのような事情があれば、不貞行為が認定されるのでしょうか?

結論:当事者が不貞行為を否定している場合は、事件ごとの個別具体的な事実から有り・無しを判断していくことになります。

1 不貞行為とその影響
 不貞行為は、婚姻中の者が婚姻相手以外の第三者(異性)と性交渉を持つことと解されます。
 一方的に性交渉に及んだ場合(例:強制性交の加害者)も、不貞行為に該当します。

 不貞行為は、裁判上の離婚原因として規定されています(民法770条1項1号)。

 また、婚姻共同生活における平和の維持という権利利益に対する侵害として、民法上の不法行為(民法709条)にもあたることから、不貞行為をされた側の配偶者は、不貞行為をした側の配偶者に対して、損害賠償請求することができます。

 不貞行為の相手方も、故意・過失がある場合、具体的には不貞に当たることを知っていた・知り得た場合には、不法行為責任を負います。
 この場合、不貞行為をした配偶者とその相手方は、他方配偶者に対する共同不法行為となります。
 いわゆる不真正連帯債務となり、次のような効果が生じます。
① 両名が損害の全額の賠償義務を負う。
② 弁済による消滅を除いて、両名の一方に生じた事由(例:免除)は他方に何の影響ももたらさない。
③ 民法上の連帯債務の規定はそのまま適用されず、両名の実質的な関係によって判断される。

2 不貞行為に関する諸事実
(1)妊娠
 妊娠したという事実は、当該女性が直近で性交渉をしたことを推認させます。
もちろん、その相手方が他方配偶者である可能性もありますが、妊娠可能期間中に他方配偶者との間で性交渉がなかったり、困難な状態(例:別居、出張中)であったりすれば、別の第三者と性交渉をしたという可能性が一気に高まります。

(2)メール・SNS等の履歴
 不貞行為に限らず、あらゆる裁判において、メール・SNS(LINEが多い)の履歴は、重要証拠となります。
 その理由は、機械的証拠で、強い客観性を持つからです。
 
 裁判例によれば、不貞行為を推認させるやり取りとして、次のようなものがあげられます。
 「昨日の夜からふくらはぎが筋肉痛」→「エッチのせいじゃん」
 「次はもっと〇〇触っちゃおう」→「ダメだよー」

 やり取りの内容が最重要であることはもちろんですが、日時、前後の文脈、当時における双方の関係性等も踏まえた総合的な判断となります。
 特に、内容だけでは微妙な場合は、周辺事情が大きな意味を持つことになります。

(3)宿泊・同室
 両名が、同じホテル・宿泊施設に泊まったり、数時間一緒に過ごしたりした場合は、それが不貞行為を推認させる事実となります。

 もっとも、それだけで100%不貞行為があったとまでは、断定できません。
 宿泊・同室の前後の事情、当時における双方の関係性等を踏まえた総合的判断となります。

 参考までに、東京地判R4.3.25では、同室の事実を認定しつつ、数年来の自宅の出入りを含めた交流があり、持病のある一方当事者のために家事を手伝ったりしていた事実を指摘して、不貞行為を認定しませんでした。

(4)避妊具やラブホテルのアメニティグッズ
 一方配偶者の私物の中に、避妊具やラブホテルのアメニティグッズが出てきた場合、誰かと性交渉を持ったことが推認されます。

 もっとも、これだけで100%確実とまでは言えず、やはり周辺事情も含めた判断となります。

 前述の東京地判R4.3.25では、これらが見つかった事実を認定しつつ、不貞行為の認定まではしませんでした。

3 最後に
 結局のところ、他方配偶者等が否定している場合に、不貞行為がどの程度の確率をもって認定されるかは、個別具体的判断と言わざるを得ず、弁護士への相談をお勧めします。

弁護士 北野 岳志

2023年06月13日|離婚:離婚