扶養義務は、大きく2つに分けられると聞きましたが、どのような内容でしょうか?

結論:①生活保持義務と②生活扶助義務に分けられます。①生活保持義務は、主に父母が未成熟子に対して負うもので、自己と同程度の生活をさせる義務です。②生活扶助義務とは、その他の一般親族間で負うもので、自己の社会的地位に照らし相応な生活を犠牲にすることなく、給付できる限りで行う義務です。

1 扶養義務の概要
直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務があるとされています(民法877条1項)。

「直系」とは、血縁が直上直下する形でつながる関係で、親子がその典型です。

「血族」には、自然血族(出生によるつながり)と法定血族(養子縁組によるつながり)のいずれも含みます。
似た言葉に「姻族」がありますが、こちらは婚姻を媒介とする関係です(例:夫と妻の父母)。

扶養する義務、扶養義務とは、ある人の生活を維持するため、これに経済的給付(資金援助)を行う義務を意味します。
一方の人が自身の資力と稼働能力では生活できない状態に陥っていること(※ 扶養必要状態といいます)と、もう一方の人が扶養する経済的余裕(※ 扶養能力といいます)があることが必要で、いずれを欠いても具体的な扶養義務は発生しないと解されます。
つまり、親子であるAさんとBさんの双方とも生活に困窮していたり、双方とも裕福な生活を送っていたりする場合は、扶養の権利・義務は基本的に生じないということです。

2 生活保持義務
父母は、未成熟子に対して、自らと同程度の生活をさせる義務があるとされています。
父母が裕福な生活をしている場合、同じくらい裕福な生活をさせてあげなければならないということです。

このような生活保持義務は、夫婦間にも生じると解されています。

離婚する際、親権は夫婦の一方(元妻であることが多い)が持つことになりますが、もう一方(元夫であることが多い)の未成熟子に対する生活保持義務は、先順位の扶養義務者(例:再婚相手)が現れない限り、維持されます。

なお、未成熟子は、20歳未満の子を意味します。
昨今の民法改正によって、成年年齢は18歳となりましたが(民法4条)、未成熟子について特段の取り決めがなければ、基本的に20歳未満と解する運用がなされています。

3 生活扶助義務
夫婦間と父母と未成熟子間を除く扶養義務は、すべて生活扶助義務と解されます。
これは、自己の地位・職業等に相応な生活を犠牲にすることなく、可能な範囲で経済的給付を行うというものです。
裕福な生活をしている場合、裕福な生活水準を落とさない範囲で援助してあげればよく、それで十分となります。

4 扶養義務が適切に行使されない場合
扶養義務は、前述のように、一方が扶養必要状態にあり、もう一方に扶養能力があれば発生しますが、当事者間の協議が整わない場合は、家庭裁判所に調停・審判を申し立てることができます(民法879条、家事事件手続法別表第二・10)。

よく見知った間柄で法的措置をとることは、人情として躊躇するところがないとは言えませんが、やむを得ない場合は弁護士に相談の上、対応を検討すべきでしょう。


弁護士 北野 岳志

2023年05月29日|離婚:離婚