①「特定少年」とはなんですか?②通常の「少年」とどう違うのですか?
結論:①18歳以上20歳未満の者を意味します。②民事上は成年(行為能力者)と扱われること、検察官送致(逆送)の対象が拡大されていること、少年法上の特則の多くが適用されないこと等です。
1 特定少年の定義と背景
特定少年とは、18歳以上20歳未満の者のことです(少年法2条1項、同62条1項)。
民法改正によって、成年となる年齢が「18歳」となりました(民法4条)。
施行日(※ 改正された法律が適用される開始日)は、令和4年(2022年)4月1日です。
ここで、少年法上の「少年」を民法に合わせて18歳未満に引き下げるか否かが議論されました。
18・19歳は類型的に成長発達途上で可塑性が認められること等が考慮され、引き下げ自体は見送られましたが、民法上は成年となることやこの年齢になると事理弁識能力は一般に相当程度認められること等が考慮され、「特定少年」という新たなカテゴリーが設けられることになりました。
2 「特定少年(18・19歳)」と「少年(18歳未満)」の違い
(1)逆送の対象拡大
少年は、捜査機関から家庭裁判所への全件送致が規定されていますが、死刑・懲役・禁錮にあたる罪で、刑事処分が相当である場合は、家庭裁判所は検察官へ送致しなければならないとされます(少年法20条1項)
これが、一般に「逆送」と言われるものです。
しかし、特定少年については、単に刑事処分が相当である場合は逆送しなければならないとされており、禁固以上という限定がなくなっています(少年法62条1項)。
また、逆送が原則の場合として、16歳以上の少年が、故意に他人を死亡させた場合が規定されていますが(少年法20条1項)、特定少年においては、死刑又は無期若しくは短期1年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪(例:強盗罪、強制性交罪)を犯したことも加えられています(少年法62条2項 ※犯行時18-19歳であることが要件)。
(2)保護処分の特則
特定少年に保護処分を科す場合は、犯罪の軽重を考慮して、相当な限度を超えない範囲内において、つぎのいずれかとしなければならないとされています(少年法64条1項)。
① 6ヶ月の保護観察
② 2年の保護観察
③ 少年院送致(3年以内)
このうち、②については、遵守事項に違反した場合は、上限1年の範囲内において、(犯情の軽重を考慮して)少年院に収容することができる期間を定めなければならないとされており、特定少年としては気を抜くことはできません。
(3)少年法の特則の不適用
少年は、刑事手続きにおいて、成年と異なる扱いをすべき特則が複数定められていますが、特定少年においては、それら特則の多くが適用されません(少年法65条、67条、68条)。
適用されない特則をいくつか挙げていきます。
・少年法48条1項:少年を勾留するのに「やむを得ない場合」を要件とする規定
・少年法49条1項:少年は、他の被疑者・被告人となるべく接触させないという規定
・少年法52条1項:少年に有期懲役・禁錮を科すには、不定期刑をもってするという規定
・少年法54条:少年に労役場留置を科すことはできないという規定
・少年法60条1項:少年の刑の執行が終了又は免除された者は、人の資格に関する法令の適用において、将来に向かって刑の言渡しを受けなかったとみなすという規定
・少年法61条:公訴提起された少年事件について、氏名等その者が当該事件の本人であることを推知させるような報道をしてはならないという規定
これらのうち、少年法52条1項の不適用によって長期間の懲役・禁錮刑が科されうること、及び、少年法61条の不適用によって実名報道される可能性が高まることは、特に留意しておくべきです。
このように、特定少年は、18歳未満の少年と20歳以上の成人との折衷的な扱いを受けるようになっています。
弁護士 北野 岳志