少年審判における処分には、どのようなものがありますか?

結論:①不処分決定、②保護処分、③中間決定である試験観察があります。

1 不処分決定
家庭裁判所は、保護処分に付する必要がないと認められるときは、少年を保護処分に付さないとの決定をします(少年法23条2項)。
不処分となる類型としては、①軽微な事件、②保護的措置、③別件保護中の3つがあげられます。
①軽微な事件については、審判自体が開かれないことが少なくないのですが(審判不開始)、非行事実を争う等して審判が必要となった場合には、審判をした上で不処分となります。
②保護(教育)的措置とは、審判に至る過程(観護措置中の鑑別、関係者からの働きかけ)や審判における裁判官の指示・訓戒等を意味し、これらによって要保護性が解消し、再非行のおそれがないと判断された場合には不処分となります。
③別件で保護的措置や保護・刑事処分が実施され、これによって、本件で特に処分をする必要がなくなった場合には不処分となります。

2 保護処分
保護処分には、①保護観察、②児童自立支援施設・児童養護施設送致、③少年院送致の3つがあげられます。

①保護観察は、社会内において、少年の改善更生を図るものです。
保護観察を司るのは、少年の住居地を管轄する保護観察所になります(更生保護法60条)。
そして、実際に少年の指導監督にあたるのは、通常、保護観察官または保護司です(更生保護法61条1項)。
一般保護観察に付されると、少年は定期的に(※ 月1~2回が多い)保護観察官または保護司を訪れ、近況を報告します。
これに対して、保護観察官または保護司は、必要な指導や助言を行うとともに、保護観察所に対して少年の近況を報告します。
期間は、少年が20歳に達するまでか、2年とされています。もっとも、改善更生が順調であれば、その途中で解除または一時解除が認められます(更生保護法69条70条)。

②児童自立支援施設・児童養護施設は、家庭環境が更生に適さず(※ ネグレクトがある、保護者がいない、虐待が行われている等)、非行性がさほど進んでいない少年を対象としています。
実際の運用は、中学生を中心とする義務教育中の児童が大半を占めています。
少年院と異なり、開放施設であり、生活指導等も家庭的な雰囲気の中で行われます。

③少年院は、少年の自由を拘束した上で、矯正教育を行う閉鎖施設で、最も強力な保護処分といえます。
少年院は、(A)第1種少年院(おおむね12歳以上~23歳未満で、心身に著しい故障のない者が対象)、(B)第2種少年院(おおむね16歳以上~23歳未満で、心身に著しい故障はないが犯罪的傾向の進んだ者が対象)、(C)第3種少年院(おおむね12~26歳で、心身に著しい故障のある者が対象)、(D)第4種少年院(少年院において刑の執行を受ける者が対象)、(E)第5種少年院(18歳以上の特定少年が対象)の5つが設けられています。
ただ、通常は、(A)第1種少年院を指して言われることがほとんどです。

少年院では、特別の場合を除いて外出することはできず、規律ある生活に従うことが求められ、違反者には懲戒することができるとされています。

少年院送致の期間は、標準が2年以内とされています。
ただ、矯正教育を実施する上での標準期間は、おおむね1年程度のようです。
このほか、6ヶ月以内(※ 標準は4~5ヶ月)の短期間、4ヶ月以内(標準は2~3ヶ月)の特別短期間、2年超の相当長期等があります。

なお、少年院における処遇が最高段階に達し、少年院を退院させることが改善更生のために相当と認められる場合は、仮退院が許されます(更生保護法41条)。
仮退院中は、保護観察に付されることになります(更生保護法42条、同法40条)。

3 試験観察
試験観察は、家庭裁判所が、少年の保護処分を決定するため必要があると認める場合に、終局処分を一定期間留保した上で、少年の行動等を家庭裁判所調査官の観察に付すことです(少年法25条1項)。

観察期間は、在宅試験観察は3~4ヶ月程度、補導委託観察は4~6ヶ月で、基本的には、調査官が少年や保護者と定期的に面接し、遵守事項(少年法25条2項1号)が守られているかを確認しつつ、作文・日記の指導や心理検査の実施等を行います。
その上で、家庭裁判所において最終審判が開かれ、期間中の調査結果や委託先からの報告を踏まえて、処分(不処分、保護観察、少年院送致)が決定されます。

前述の在宅試験観察は、保護者のもとで生活をしつつ、調査官の指導・観察を受けます。
補導委託観察は、民間の施設・団体・個人に補導が委託され、そこでの働きかけを行いながら観察を行うものです。
補導委託観察には、宿泊・居住を伴う身柄付き補導委託と、在宅のまま行われる在宅補導委託がありますが、前者は減少傾向にあります。

4 最後に
審判で決定される処分の見通しを立てつつ、それに向けた適切な付添人活動を行うには、専門家である弁護士の支援が必要と考えられます。
時間的制約もあることから、速やかにご相談を受けることが推奨されます。

弁護士 北野 岳志

2023年04月13日|刑事:刑事