「国選付添人」は、どのような場合に選任されるのですか?

結論:検察官の関与が決定している事件と被害者の審判傍聴が許可された事件で、私選付添人がいない場合は、必ず国選付添人が選任されます。このほか、裁判所の裁量で国選付添人が選任されるものがあります。

1 付添人の概要
少年事件が家庭裁判所に送致されると、担当弁護士における「弁護人」の選任は効力を失い(少年法42条2項)、それ以降は「付添人」として活動する必要があります。

付添人は、少年の保護・教育といった目的が適正に実現されるため裁判所への協力者的役割を担うと同時に、少年の権利・利益の擁護という弁護人的役割を担うものと解されています。
弁護士のほか、家庭裁判所の許可を得た保護者もなることができます(少年法10条1項2項)。

2 必要的国選付添人
家庭裁判所は、少年の行為が死刑、無期、または、長期3年を超える懲役・禁錮にあたる罪(例:殺人罪、傷害罪、窃盗罪等)に該当し、その事実を認定するための審判手続きに検察官の関与が必要と認める場合は、決定で検察官を審判に出席させることができます(少年法22条の2第1項)。
この検察官関与事件では、必ず弁護士の付添人が必要とされており、私選付添人(弁護士に限る)がいない場合は国選付添人が付されることになります(少年法22条の3第1項)。いわゆる必要的国選付添人です。
なお、いわゆる逆送事件(少年法20条1項2項)は、成人と同様の刑事手続きとなるため、付添人でなく弁護人が対応することになります。

また、家庭裁判所は、少年の行為が故意によって被害者を死傷させた罪(例:殺人罪、傷害罪)、業務上過失致死傷罪、自動車過失運転致死傷罪等に該当し、当該事件の被害者らから審判傍聴の申し出があった場合は、これを許可することができます(少年法22条の4第1項)
この被害者傍聴事件では、必ず弁護士の付添人が必要とされており、私選付添人(弁護士に限る)がいない場合は国選付添人が付されることになります(少年法22条の5第1項)。
ただ、少年等が不要との意思を明らかにした場合は付さなくてよいとされており、前述の検察官関与事件との違いとして挙げられます。

3 裁量的国選付添人
家庭裁判所は、次の4要件を満たす場合は、裁量で国選付添人を付すことができるとしています(少年法22条の3第2項)。

近年の傾向として、この裁量的国選付添人が付される事例は増えているように思われます。

1つ目は、①死刑、無期、または、長期3年を超える懲役・禁錮にあたる罪にかかる犯罪少年、及び、触法少年の事件であることです。
犯罪少年と触法少年の意義については、次に挙げた以前の記事にてご確認ください。
https://prop-matsusaka.com/posts/faq14.html

2つ目は、②収容観護が行われていることです。

3つ目は、③弁護士である私選付添人がいないことです。

4つ目は、④事案の内容、保護者の有無その他の事情を考慮し、審判の手続きに弁護士の付添人が関与する必要性が認められることです。
具体的には、非行事実について争っているもの、少年院送致等の重大な処分が予想されるもの等が典型例です。
典型例に該当しない場合でも、非行の動機・態様、その後の情況、保護者の有無・監護能力や意欲、監護情況、性格、年齢、能力等が考慮され、必要性が認められる余地はあります。

なお、国選付添人選任の申入れを行ったものの、選任されなかった事件については、日弁連の付添援助制度が利用できる可能性があります。

弁護士 北野 岳志

2023年04月11日|刑事:刑事