少年事件では、どのような場合に「観護措置」が行われるのですか?

結論:①少年事件が係属していること、②審判条件が具備されていること③非行事実を行ったことについて嫌疑が存在していること、④審判を行う蓋然性があること、⑤観護措置の必要性が認められること、以上の要件がすべて満たされていることが求められます

1 観護措置の概要
観護措置は、調査官観護(少年法17条1項1号)と収容観護(少年法17条1項2号)の2つが規定されていますが、前者はほぼ活用されておらず、現状、観護措置といえば収容観護を指すと解されています。
収容観護とは、非行少年を少年鑑別所に収容し、逃亡や罪証隠滅を防止するとともに、審判に資する調査や心身の鑑別を行う措置と解されます。

少年事件では、捜査機関から家庭裁判所への全件送致が定められていますが(少年法41条、42条)、観護措置は家庭裁判所へ送致されて24時間以内に行わなければならないとされています(少年法17条2項)。

観護措置の期間は2週間とされ、「特に継続の必要があるときは」更新できるとされますが、実務上更新されることが一般であり、4週間かかると考えておくべきです。

2 観護措置の要件
以下では、先出しした観護措置の各要件について詳述します。

少年事件の係属については、事件が家庭裁判所に送致されている時点で、全件満たされているといえます。

審判条件の具備とは、審判権の存在、少年が20歳未満であること、手続きが適法かつ有効になされていること、一事不再理の原則(※ 以前に確定した審判・判決については、再び審判・裁判にかけられることがないというもの)に反していないこと等です。
これも、家庭裁判所に送致されている時点で満たされているのが通常ですが、土地管轄(少年法5条1項)が欠けている又は他の管轄地で調査・審判を行うのが望ましい場合は、移送措置がとられています。

③の嫌疑の程度は、非行事実を行ったと疑うに足りる相当な理由が必要と解されますが、前提となる勾留で必要となる嫌疑と同程度であるため、否定されることは基本的にありません。

④の審判を行う蓋然性は、観護措置決定時に審判開始決定がなされるべき要保護性が存在していることであり、否定されることはまずありません。

観護措置の必要性は、(ア)審判・調査の出頭確保のための身体拘束の必要性、(イ)保護の必要性、(ウ)少年鑑別所における心身鑑別の必要性のいずれか1つが存在していれば、認められると解されます。

3 観護措置を争う方法
実務上、少年が逮捕・勾留されて家庭裁判所に送致された場合は、観護措置がとられることが通常です。
観護措置決定に対しては、異議申立て(少年法17条の2)や取消しの申立て(少年審判規則21条を根拠とする職権発動を促す申立て)を行うことができますが、認められることはなかなかない模様です。

弁護士 北野 岳志

2023年04月11日|刑事:刑事