少年事件で見聞きする「要保護性」とは何でしょうか?

結論:①犯罪的危険性、②矯正可能性、③保護相当性の3要素で構成されると解され、少年の処遇を決める重要な考慮要素となります。

少年法19条1項は、「家庭裁判所は、調査の結果、審判に付することができず、又は審判に付するのが相当でないと認めるときは、審判を開始しない旨の決定をしなければならない」と定めています。
下線部における審判に付すのが相当か否かが、「要保護性」の要件と言われるものです。

要保護性の構成要素の1つ目は、①犯罪的危険性再非行可能性)です。
これは、少年の性格や環境に照らして、将来再び非行に陥る危険性を意味します。
要保護性の中核をなすと解され、非行事実の態様、回数、原因・動機、保護処分歴、心身の状況、性格、反省の程度、保護者の有無とその保護能力の程度、職業の有無・種類、職場・学校・友人関係、反社会的勢力との関係、家庭や地域の環境、行状一般等を総合的に考慮して判断されます。
この中で非行歴、保護処分歴が著しいと、非行に対する親和性が強いと解されることになります。
また、保護者に育児放棄や児童虐待等があったりすると、保護者の指導・教育による犯罪的危険性の低下は困難と評価されやすくなります。

要保護性の構成要素の2つ目は、②矯正可能性です。
これは、保護処分による矯正教育を施すことによって、犯罪的危険性を解消できる可能性を意味します。
少年は、一般に可塑性に富んでいて、矯正可能性があると評価されています。
例外的に、重度の精神疾患を抱えていたり、反社会的勢力の幹部であったりする場合は、矯正可能性がない・乏しいと評価されることになります。
なお、少年が非行事実を否認していることや、正面から向き合っていないことをもって、矯正可能性を消極評価してよいかは、議論のあるところです。

要保護性の構成要素の3つ目は、③保護相当性です。
これは、少年の処遇にとって、保護処分が最も有効・適切といえることを意味します。
現行法は、保護処分原則主義(※ 少年には、できるだけ刑罰でなく、保護処分その他教育的手段によって非行性の除去に努めなければならないという考え方)を採用していることから、保護相当性は基本的に認められます。
例外的に、非行内容が非常に重大・悪質で、世論や被害感情等から刑事責任を問うのが相当な場合は、家庭裁判所から検察官へ送致し、成人と同様の刑事手続きを受けることになります(少年法20条1項2項)。

少年事件における弁護・付添活動では、要保護性をどの程度解消できるかが、大きなポイントとなります。
お悩みの方は、少年事件を取り扱う弁護士にご相談ください。

弁護士 北野 岳志

2023年04月08日|刑事:刑事