過失傷害・致死罪と業務上過失致死傷罪は、どう違うのでしょうか?

結論:行為に業務性が認められるかどうかによって区分され、通常、業務上過失致死傷の方が高度の注意義務を課せられます。

1 過失致死傷罪

過失致死傷罪(刑法209条、210条)における「過失」とは、犯罪事実の認識・認容のないまま不注意によって一定の作為・不作為を行うこととされています。
不注意が認定されるには、行為者に注意義務があったこと、及び、その注意義務を怠ったことが必要です。
なお、行為者が注意義務を履行することが可能であったことが前提となります。

例えば、大型犬の散歩中にその犬が他人に飛び掛かってけがをさせた事案で、飼い主が犬の動作を制御すべき注意義務があるところ、これを怠ったとして、過失傷害罪が認定されたというものがあります。

2 業務上過失致死傷罪

他方、業務上過失致死傷罪(刑法211条)では、当該行為に業務性があり、かつ、その業務における注意義務を怠ったことが成立要件となります。
この「業務」とは、本来人が社会生活上の地位に基づき反復継続して行う行為であって、かつ、その行為は他人の生命身体等に危害を加えるおそれのあるものとされています(最判昭和33・4・18)。
日常生活において、誰もが容易にできるような行為・特段専門性を要しない行為については、業務性が否定されやすくなります。
免許等は必須ではありませんが、通常、免許者・有資格者が行うような行為については、業務性が認められやすくなります。

具体的な注意義務の内容については、個別具体的に検討されることになりますが、各業法、業界の慣行、国から示された行動指針や基等が参考にされることが多いです。
ただ、業法や国の基準さえ遵守していれば大丈夫かというと、必ずしもそうとはいえません。
デパートビルの火災事故における責任が問われた最決平成2・11・29では「火災の拡大を防止するため、法令上の規定の有無を問わず、可能な限り種々の措置を講ずべき注意義務があったことは明らかである」と判示されています。

他人の生命身体等に危害を加える可能性が高いほど、及び、大人数に危害をもたらすような業務であるほど、高度の注意義務が課せられる傾向があると言えます。
具体的には、火を扱う仕事、イベントを主催・警備する仕事、有害な化学物質を扱う仕事等です。

弁護士 北野 岳志

2023年04月07日|刑事:刑事