自筆証書遺言は、①すべて本人が直筆で書かなければなりませんか?②検認の手続きは必要ですか?

結論:①財産目録については、自筆要件が緩和されています。②原則は必要ですが、保管制度を利用した場合は省略できます。

<①について>
自筆証書遺言とは、被相続人(遺言者)が、遺言書の全文、日付、氏名を自署し、これに押印したものと定義されています(民法968条1項)。

遺言書には財産目録(すべての相続財産の概要をまとめたもの)を含めるのが推奨されますが、これを自筆とすることは煩瑣であり、これによって自筆証書遺言の簡便性が損なわれるとの批判がありました。

そこで、平成30年の民法改正で、財産目録については自筆でなくともよいとされました。
具体的には、パソコンによる作成はもちろん、第三者による代筆、預貯金通帳のコピーや不動産登記事項証明書等も含まれるとされています。
なお、被相続人(遺言者)は、偽造等防止のため、財産目録の各頁(※ 両面あるものは表裏それぞれに)に署名押印しなければならないとされていることには注意を要します(民法968条2項)。

<②について>
遺言書の検認とは、遺言書(※ 公正証書遺言は除く)の偽造・変造を防ぐ証拠保全の手続きであって、家庭裁判所にて行われます(民法1004条1項)。
検認を経ずに遺言書を開封した場合、遺言書が即無効になることはありませんが、偽造・変造がなされていないという公的な証明が得られないため、相続人間の争いの火種となり得ます。

自筆証書遺言を開封する場合、原則として前記検認の手続きを経る必要があります。

しかし、平成30年の民法改正(※ 施行は令和3年9月1日)で、自筆証書遺言の保管制度が創設されました(法務局における遺言書の保管等に関する法律)。

これによって、被相続人(遺言者)は、法務局が管轄する遺言書保管所に、自筆証書遺言の保管を申請することが可能となりました(同法4条1項)。
後日、被相続人(遺言者)が亡くなると、相続人等の関係者は、遺言書保管所に対して、遺言書の閲覧のほか、遺言書情報証明書の交付を請求することができます(同法9条)。
この点について、検認手続きは不要とされているので(同法11条)、相続人等の関係者は、遺言書の内容を速やかに確認し、遺言内容の実現に向けて、手続きを進めることが可能となります。

なお、保管制度を使用していたとしても、自筆証書遺言の効力を争うことは妨げられないので、絶対的効力を付与するものではない点には注意を要します。

弁護士 北野 岳志

2023年04月06日|相続:相続