告訴と被害届はどう違うのですか?

結論:処罰意思の有無、方式、捜査機関における義務等において、違いが認められます。

1 被害届
通常の被害届には、犯罪や被害の事実のみが記載され、処罰意思は含まれていません。
処罰感情については、供述調書にて記録されるのが通例ですが、処罰意思と厳密に言えるかは微妙なところです。

被害届は、被害者の口頭の申し出を捜査機関担当者が筆記するか、捜査機関担当者が傍で指導しながら被害者が記載するパターンが多いと思われます。
後述の告訴状のように、専門職が代理人として被害届を出すパターンはあまりありません。

後述の通知義務・告知義務は、被害者が別途請求しないと、課せられることはありません。
なお、一部の捜査機関においては、運用上、自発的に通知や説明を行っていることがある模様です。

2 告訴
告訴とは、被害者その他法律上告訴権を有する一定の者(以下「告訴人」といいます。)が、捜査機関に犯罪事実を申告し、犯人の処罰を求める意思表示と定義されています。

告訴は口頭でも可能ですが(刑事訴訟法241条1項参照)、大半は、告訴状という書面の提出をもって行われます。
告訴状は、特定の犯罪事実について告訴人が犯人の処罰を求める意思が表示され、告訴人が誰であるかが明らかにされていればそれで足ります。犯人が氏名不詳であっても、告訴は有効です。
告訴状は、相応の専門性が求められることもあって、被害者本人でなく、弁護士等の専門職が作成することが非常に多くなっています。

告訴状が提出されると、原則として、捜査機関担当者はこれを受理する義務があります
ただ、実務では、明らかに犯罪が成立しないと思われる事例や、根拠が不明瞭なものについては、補正を求める等して、自主的に撤回させることが少なくありません(※ それでも撤回に応じなければ受け取るしかありませんが)。

検察官は、起訴・不起訴をしたことを告訴人に通知しなければならないほか、不起訴にした場合はその理由を説明しなければなりません(刑事訴訟法260条、同261条)。

弁護士 北野 岳志

2023年04月04日|刑事:刑事