国選弁護人における「資力要件」とは何ですか?
結論:50万以上の流動資産を有しているか否かという基準です。
被疑者国選弁護人については刑事訴訟法37条の2が、被告人国選弁護人については刑事訴訟法36条が、それぞれ規定していますが、そこに書かれている「貧困」の具体的内容が問題となります。
言い換えれば、「貧困」に当たらなければ、基本的に国選弁護人を付けることはできないため、私選弁護人を選任する必要があります。
当該被疑者・被告人が保有する流動資産が50万円未満であれば、「貧困」の要件を満たすことになります。50万円以上であれば、「貧困」にはなりません。
ここでいう流動資産とは、すぐに現金化・費用化できる資産のことで、典型例としては、現金や預貯金のことです。
不動産や自動車などは、流動資産に該当しません。
国選弁護人選任の場面では、負債との総合評価はされません。
例えば、100万円の現金があるものの、返済期限の到来した借金が200万円ある場合、総合的にはプラスマイナスして100万円の負債があると評価することができますが、「貧困」要件を満たすことにはなりません。
家族が50万円以上の流動資産を保有していることは、通常、考慮されません。
ただ、家族が自費で私選弁護人を選任した場合は、既存の国選弁護人は解任されることになります(刑事訴訟法38条の3第1号)。
50万円以上の流動資産が有るか否かは、通常、被疑者・被告人からの資力申告書によって判断されます。
厳密に審査するのであれば、預貯金通帳の写し(通帳レスの場合は残高ページの写し)等の裏付け資料の提出が求められますが、弁護人の選任は急いで行う必要があることから、そこまで行うことはあまりない模様です。
弁護士 北野 岳志