加害者側に請求できる弁護士費用はいくらでしょうか?

結論:請求額の1割とするのが実務の傾向です。

 

交通事故における弁護士費用は、決して小さい額とは言えません。
それをカバーするものとして、弁護士費用保険(共済含む)がありますが、これを付保していなかった場合は、加害者側に請求するほかありません。

そもそも、弁護士費用を加害者側に請求できるのかという論点もありましたが、最判昭和44.2.27(判タ232号276頁)が、一般人は弁護士なしでは十分な訴訟活動ができないから、訴訟追行を弁護士に委任した場合は、諸般の事情を斟酌して相当と認められる範囲の額を請求できる旨を示したことによって、決着したということができます。
実際の訴訟では、弁護士費用について、加害者側は否認するものの、詳細な主張立証をしてくることはほぼなく、争点化することは基本的にありません。

前記最判は、弁護士費用として相当な額について複数の考慮要素は提示したものの、それをどのように考慮して最終的にいくらを導き出すかまでは、定かでありません。
そのため、弁護士費用として相当な額をどのように算定するかが次に問題となりますが、現在は認容額の1割とすることで固まったと解されます。
1割の超える認定をした裁判例もありますが、圧倒的多数は(特段具体的理由を示さないまま)1割で認定しています。

すべての事件で1割が相当とまでは思われず、事件ごとに個別具体的な検討をしてもよいように思われます。
しかし、双方代理人及び裁判所のいずれも、これ(1割)が当たり前だという前提で議論をしていることがほとんどです。

なお、加害者側保険会社は、訴訟になっていない限り、弁護士費用を損害項目に含めないのが一般的です。
また、訴訟上の和解においては、いわゆる和解の調整金として、弁護士費用を事実上考慮しているものの、認容額の1割より少ないのが通常です。
そのため、認容額の1割の弁護士費用を獲得するには、どのような内容になるかわからないという不安があるものの、判決を求めるしかないのが実情です。

弁護士 北野 岳志。

2023年03月23日|交通事故:交通事故