父が交通事故で急逝しましたが、相手に請求できる葬儀費用には上限があるのでしょうか?

結論:上限額に近いものはあると考えられます。

 

自賠責保険では、葬儀費(関連費用含む、以下同じ)は100万円とすると規定されています。そのため、自賠責保険から回収できる葬儀費は100万円が上限となります。

一般に、相手方にいくら請求できるかというと、「150万円」が大きな壁となっています。

150万円を超える額が認定された事例は複数存在し、考慮要素としては、葬儀(お別れ会も含む)の回数、死亡場所と墓地のある実家の距離、死亡者の社会的地位・立場、新たに仏壇・墓石等を購入したこと等が挙げられています。
とはいえ、これらの要素があれば、150万円を超える葬儀費が高確率で認定されるわけではなく、実際のところ、大多数の事例において、150万円までしか認定されていません。

被害者遺族の方から怒られそうですが、葬儀費を損害として認定すること自体を否定する考え方もあります。
すなわち、その人が当該交通事故に遭わなくても、いずれ将来のどこかの時点で亡くなって葬儀を行うことになるのだから、葬儀費の支出が早まったにすぎないという理屈です。

葬儀費を正面から否認した裁判例はないと思われますし、最高裁も葬儀費を損害認定しています。
ただ、前述の「人はいずれ亡くなる論」が、葬儀費に事実上の上限額を設けることに何かしらの影響を与えている可能性は否めません。

葬儀費につき、実際にかかった金額を請求することは当然ですし、150万円を超える金額が認定される可能性はあります。
しかしながら、そのハードルが非常に高くなっていることについては、知っておいたほうがよいと思われます。

なお、実際にかかった葬儀費が150万円を下回っている場合は、その実額しか認定しないのが多数です。
そのため、葬儀費がいくらかかったか、言い換えれば、150万円以上要したかの立証は必要です。

弁護士 北野 岳志

2023年03月22日|交通事故:交通事故