よくある質問
2026/10/13

紹介料の受領と会社に対する犯罪

事例:甲会社の現地責任者を務めていた社員乙は、取引先業者から社員個人に対する「紹介料」として金員を受領し、甲会社に報告しないまま自分のものにしました。

1 はじめに
事例にある乙の行為は、「背任罪」(刑法247条)、または、「業務上横領罪」(刑法253条)が成立する可能性があります。

2 背任罪(刑法247条)が成立する可能性
背任罪は、「他人のためにその事務を処理する者が、自己の利益を図る目的で任務に背く行為をし、本人に財産上の損害を与えたとき」に成立します。
• 他人の事務を処理する者:乙氏は甲社の現地責任者として業務(取引)を担当しており、甲社に対して誠実に業務を遂行する義務(善管注意義務)を負っています。
• 任務違背行為と図利目的:会社に無断で業者から受領した「紹介料(キックバック)」を黙って自分のものにすることは、会社の信頼・任務に背いて自己の利益を図る行為と評価される可能性が大きいです。
• 財産上の損害:取引先の業者側が「紹介料」を支払う余地があったということは、「その分だけ安く買えたはずである」、あるいは「紹介料分の金額が購入代金に上乗せされていた」と解釈されます。これにより、甲社には本来得られたはずの利益を失わせたという「財産上の損害」が生じたと解されます。

3 業務上横領罪(刑法253条)が成立する可能性
業務上横領罪は、「業務上自己の占有する他人の財物を横領したとき」に成立します。
• 他人の財物の領得:業者から渡された「紹介料」の性質が、実質的に「甲社に対する買い付け代金の割引分」等と解釈される場合、その金員は乙個人のものではなく「甲社のお金(他人の財物)」となります。
• 甲社に属すべきお金であることを認識しながら報告せず、自分のものにした場合は、業務上占有していた他人の財物を奪取したとして業務上横領罪が成立する可能性があります。

4 「自分の取り分」という認識について
乙氏自身が「(甲社の金ではない)自分の取り分だ」と認識し、そのように主張したとしても、前記犯罪の故意が否定される可能性は低いでしょう。

会社の業務の過程で生じた金員を、会社に報告しないということは通常あり得ませんし、報告しなかったこと自体、本当は会社に帰属する金員であると(実は)認識していたと評価されることになり得ます。
言い換えれば、報告すれば会社に納めなければならないから、黙っていたのだろうと解釈されるわけです。

なお、会社からの給料が少なかった・遅れていたとか等のように、犯罪に至ったことについて会社側に一定の原因が有ると解される事情がある場合、犯罪の成立には影響しないものの、量刑において考慮される(=刑期が軽減される)ことはあり得ます。


弁護士 北野 岳志

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