よくある質問
2026/10/09

刑事事件における示談と被害弁償の違いは?

1 はじめに

刑事事件における「示談」と「被害弁償」の大きな違いは、「被害者との合意(お許しや条件の設定)まで至っているかどうか」です。

  • 示談:被害弁償(金銭賠償)に加えて、今後の接触禁止などの「遵守事項」や、加害者を許すという「宥恕(ゆうじょ)」について双方が合意すること。
  • 被害弁償:示談の合意には至らないものの、被害の金銭的賠償(治療費や被害額の支払い)のみを行うこと。

 

刑事事件における弁護活動の1つとして、被害者との示談交渉があり、損害の内容や金額のほか、双方(特に加害者側)が遵守すべき事項、宥恕の有無等が話し合われます。

 

示談の成否や内容は、加害者に対する刑事処分に大きな影響(一般に、量刑を軽減する効果あり)を及ぼし、不起訴処分となる要因でもあるから、加害者にとって非常に重要です。

被害者においても、自身の個人情報を加害者本人に明かさず、民事訴訟等の負荷の大きい手続きを用いることなく相当な賠償を得られるという意味において、重要と思われます。

 

2 示談の主な内容

(1)損害の内容や金額

窃盗や器物損壊などの財産に関する犯罪では、被害に遭った金員や物の価値の回復が中心となります。

他方、暴行・傷害や性犯罪など、人の身体に対する有形力の行使を伴う犯罪では、治療費のほか、慰謝料が中心となります。

(2)遵守事項

加害者が被害者や被害店舗に接触しないことや、被害者に関するすべての個人情報の破棄・消去、第三者への口外禁止等が定められることが多いです。

(3)その余の請求放棄や精算条項

被害者がこれ以上の請求を放棄することや、加害者・被害者とも示談で決めたこと以外では何も請求しないことを取り決めることがほとんどです。

(4)宥恕の有無

宥恕とは、加害者に対する寛大な処分を求めたり、処罰を求めなかったりすることです。

中には被害届の取下げまで踏み込むこともあります。

 

示談書中に宥恕の文言があれば、不起訴処分となる可能性が高まると考えられるため、加害者側は、宥恕の獲得を非常に重視するのが通例です。

 

3 示談の成立

損害の内容・金額、遵守事項、宥恕の有無等において、双方が合意に至れば「示談」成立となり、その証として「示談書」を取り交わすことになります。

加害者側弁護士は、示談金を支払った上で、捜査機関に示談成立を報告し、不起訴や量刑の軽減を求めることになります。

 

4 被害弁償

示談交渉をするも、条件面で折り合いがつかなかったり、被害者側の被害感情が峻烈で示談を拒否したりすることがしばしばあります。

そのような場合、すなわち、示談には至らなくても、被害のすべて又は一部の金銭賠償にだけは応じていただけることがあります。

これを、示談には至らない、単なる「被害弁償」と言い表しています。

 

(単なる)被害弁償だけでも、何もしていない場合に比べて、量刑を軽減する効果はありますが、示談に比べて、不起訴処分となる可能性は低くなります。

 

5 まとめ

実務上の観点から整理すると、両者の違いは次のように定義できます。

「示談」:刑事事件に関する損害の内容や金額、遵守事項、宥恕の有無等に関する加害者と被害者との合意

「被害弁償」:示談には至らないが、被害者が損害のすべて又は一部の金銭賠償に応じ、加害者が前記金員を支払うこと

 

弁護士 北野 岳志

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